ワンコも楽しいの?
もちろんだとも。ライフくんも、地球に来てもう1年になるんだな。かなり慣れてきたようだが、聞きたいこととは何だね。
カホちゃんはいま、タケGの犬と遊んでいるよね。
そうだな。カホちゃんも犬もとても楽しそうに見えるな。
その楽しそうというのが、わからないんだ。
カホちゃんが、いまどんな気持ちなのか、それがわからないということかね?
そもそも、その「気持ち」という言葉が、サイエンスイ星にはないんだよ。
では尋ね方を変えてみようか。カホちゃんの顔の動きをよく見てごらん。涙が出ているかな?
涙なんか出ていないね。
では口はどうなっている。あるいはカホちゃんの目からはどんな印象を受ける。
口も目も笑っているように見える。
そういう状態を「喜んでいる」とか「楽しそう」というのだよ。ライフくんは、よくカホちゃんと一緒にいるから、あの子の顔が変化するのに気づいているだろう。
確かに。涙を流しているときもあったし、友だちとけんかしているときの顔からは、何か強い力のようなものを感じたこともある。
それらは人間の感情、つまり気持ちとかこころの動きだ。そして感情は顔の表情に表れるんだ。その感情は大きく4つ、喜怒哀楽に分けられる。
喜怒哀楽、か。
ライフくん、なに難しい顔をしてるの?一緒に遊ぼうよ。タケGのワンコは、すっごく賢くて遊んでて楽しくて、もう笑っちゃうくらいだよ。ライフくんが一緒に来てくれたらきっとワンコも喜ぶと思うよ。
気持ちは、どんなときに動くの
※ライフくんと一緒に家に戻ってきたカホちゃん
カホちゃんは、さっきワンコと遊んでいたよね。遊ぶって楽しかった?
もちろんだよ。タケGのワンコは賢いからね。私の考えていることがわかるような気がするの。そして、ワンコと遊んでいると、私もワンコがどうしてほしいと思っているのかが、なんとなくわかるような気持ちになるしね。
その「気持ち」とか「楽しい」なんだよ、僕にとっては不思議というか、よくわからないのは。
楽しいがわからないといわれてもね、それこそ困っちゃうな。楽しいを言葉にして説明した経験なんてないからなあ。改めてたずねられると、意外に答えられないものだね。
おもしろそうな話をしているじゃないか。「楽しい」がどういうことか、辞書には「満ち足りていて、ゆかいな気持ち」と書いてあるよ。
ちゃんとした説明だと思うけれど、それではライフくんにはよくわからないだろうね。
ではカホはどんなときに楽しいと感じるかな。
いちばんは遊んでいるときでしょう、それから音楽を聞いているときも楽しいし、お母さんがつくってくれた、おいしいご飯を食べているときも楽しいな。
勉強しているときは楽しくないのかい?
そんなことないよ。おもしろい本を読んでいるときは楽しい。ただ算数の難しい問題を考えているときは、あんまり楽しいとはいえないかな。でも、そんな問題を自分で考えて答えを出せたときは、楽しいというよりもうれしいよね。やったぁ~、できたぁ~って感じ。
また、新しいのが出てきた。「うれしい」は「楽しい」とは違うんだよね。
そうねえ、似ているようではあるけれど、同じとはいえないね。
ちなみにハヤモンは、どんなときが楽しくて、どんなときがうれしいの?
楽しいのは、やっぱり研究に夢中になっているときかな。うれしいといえば、これまででいちばんうれしかったのは、カホが生まれたときだ。これは自信を持っていえるよ。
二人の話を聞いていると「楽しい」も「うれしい」も、何かがきっかけとなってわき起こるんだね!
そうね、何もしていないのに突然うれしくなる、なんてことはないかな。
なるほど。何かがあって「楽しく」なったり「うれしく」なるんだね。じゃあ、その何かって何なんだろう?
とにかく遊びたくなるんだよ
カホ:遊ぶと楽しいでしょ?だから遊びたくなるんだよ。おなかがすいたときに、ご飯を食べたくなるのと似ているかもしれない。
カホは、おいしいご飯を食べても楽しくなるんだろ?
う~ん、正確には楽しいのか、うれしいのか、どっちだろう。とにかくご飯を食べたいって思ったときには、できるだけ早く食べられるとうれしいよね。
それだよ、カホちゃんはときどき何かをしたくなるの?
え~っ、また不思議なことを聞くのね。ライフくんは、何かをしたいとは思わないの?
そうだなあ、サイエンスイ星では僕らは基本的に、ただふわふわと浮いているだけだったからなあ。
私は、じっとしているのが好きじゃないというか、じっとしていられないタイプなの。だから、いつも何かしていたいんだ。
お腹がすくとご飯を食べたくなる、のどが乾くと水を飲みたくなる。こういうのは人間の基本的な欲求というんだ。
欲求!また新しいことばが出てきた。
その欲求が満たされたときに、人は心地よくなるんだよ。
欲求って、つまり何かしたいって気持ちのことだよ。やりたいことを思ったとおりにできるとうれしいよね。
逆に思い通りにできなかったら、どんな気持ちになるかな。
それはくやしかったり、ときには悲しくなることもあるし、できない自分に腹が立ったりもするかな。
おぉ~、また新しいことばが出てきたぞ。「くやしい」「悲しい」「腹が立つ」って、一体どういうことなんだろう?でも、さっきから聞いていて1つわかったのは、とにかく「何かをしたい」というのが大切なんだね。
そうだな「何かをしたい」というのが、欲求だな。
やりたいことなら、何でもやっていいの?
「何かをしたい」という気持ちが最初にあって、そのやりたいことができると、うれしかったり楽しかったりする。逆にうまくできないと、くやしかったり悲しかったりするんだよね。
まあ、そういうことになるね。
その場合、やりたいことって何でもいいの?
それはどうだろう。やっていいことと、やっちゃだめなことってあるからね。
カホちゃんは、おいしいご飯を食べるとうれしくなるっていったでしょう。それならずっとご飯を食べてればいいんじゃないのかな?
そんなことをしたら体によくないでしょう。
体によくないことはやらないんだね。
それだけじゃないよ。自分のやりたいことを好き放題にやっていたりすると、周りの人に迷惑がかかる場合もある。
やりたいことがあっても、やらない。その「やる・やらない」の区別はどうやって決めるのかな。
そこは考えるのよ。何かをやりたいと思ったときに、一呼吸おいて自分に質問してみるの。「これはやってもいいことなのかな、それともやっちゃだめなこと?」という感じね。
もし、やってはいけないことなのに、どうしてもやりたくなったときにはどうするの?
どうしたらいいんだろう?
そういうときも、まず自分で考えるんだよ。それまでの経験を思い出して、良いか悪いかを考えてみる。
もし、やったらダメだと思っても、どうしてもやりたくなったときはどうしたらいいのかな。お父さんもそんなことって、あるでしょう?
ない、とはいいきれないね、確かに。でも、そういうときは自分で決めているルールがあるんだ。まず1人で静かな場所に入って座る。目を閉じて、息を吐くことに集中して呼吸を整える。そしてやりたいことをやってしまったときに、何が起こるのかを想像してみる。自分はどうなるのか、自分の周りにいる人には何が起こるのか。
それって未来を考えるわけだよね、未来予想は僕たちもいつもやっていることだ。
そう、たとえば明日にはどうなっているといった近い未来のことから、1週間、1カ月、あるいは内容によっては半年から1年先ぐらいまで先にどんな影響があるかまで考えることもあるよ。
それは初めて聞いた話ね。すっごく面倒くさそうだけれど、とても大切なルールのような気がする。
人間は行動すると、気持ちも動く。でも、やりたいことを好きなようになんでもしてしまうと、まわりに問題が起きたりもする。地球の人って、いろいろ大変なんだね。
・地球人にとっては、気持ちがとても大切らしい。
・気持ちは、何かきっかけがあって動くものらしい。
タケG、1つ聞いてもいいかな。