モデルになりたい!

やっぱりモデルってスタイルいいよね。私も大きくなったら、モデルさんになりたい。そして、この人たちみたいにパリコレに出るんだ。


それなら、ご飯をしっかり食べないとダメね。


えっ!どういうこと?

モデルさんって、スラッとしてやせてなきゃダメなんじゃないの。


たぶんカホは知らないと思うけど、ファッションの本場フランスでは、やせ過ぎているとモデルになれないと法律で決まってるんだよ。

カホちゃんはBMIって聞いたことある?

なにそれ?スリーサイズのBWHなら知ってるけど。

BMIはBody Mass Indexといって、肥満度を示す目安なの。体重を身長で2回割り算すると出せるよ(体重(kg)÷身長(m) ÷身長(m))。

私は体重が34キロで身長が140センチだから、34÷140÷140ってこと?

身長はメートルに直して計算するの。

34÷1.4÷1.4はいくらになるかな?

チョット待ってね、いま計算するから……、

34✕5/7✕5/7だから850÷49を筆算すればいいのね。小数点第二位を四捨五入して17.3だ。


大人だと18.5未満はやせ過ぎに分類されるね。今はフランスの法律が少し変わったけれど、前の法律だったらカホはパリでモデルになれないところだよ。

 

アスリートは健康なの?

※女子3人が話しているところへ、ハヤモンが帰ってくる。

なんかおもしろそうな話してるな。カホはモデルになりたいの?


というか、カッコいい女性にあこがれてるんだ。


カッコいいも、単なる外見だけじゃなくていろいろあるじゃない。アスリートなんかも体と精神の両方を鍛えていてカッコいいと思うけど。


確かに陸上競技の選手とかもスリムでカッコいいね。あの人たちってきっと、相当きつい練習とかしてるんだろうね。

最近は女性でもボクシングをやる人がいるよね。カホちゃんもやってみたら?

ボクシングなんて、考えたこともなかったけど、たしかにカッコいいかも。ただボクサーって、すっごい減量しなきゃならないって聞いたよ。


この間、世界チャンピオンのMさんから直接聞いたんだけど、今は昔ほど激しい減量はしないようだ。以前はプロボクサーの多くが、かなり無茶というか、健康によくないような減量をしていたらしい。

無理な減量は体に良くないじゃないですか。健康ブームが広がるにつれて、ボクサーの世界でも、少しずつ考え方が変わってきたのでしょうね。

それに比べると大リーガーなんかは、まだまだかなり自由に食べてるようだね。


好き放題に食べるといえば、何といってもお相撲さんだよね。あの人たちにとっては食べるのも仕事のうちだもの。


この間、蔵前に遊びに行ったときにすれ違ったよね。あの着物を着たでっかい人たちが、お相撲さんでしょう?


そう。確かにでかい。横幅なんか僕の倍ぐらいあった。


たくさん食べて体も大きくて強い。ところが、お相撲さんの中でもいちばん強いのが横綱なのに、横綱で長生きする人は意外に多くないのよ。

意外に短命な横綱の人生

お相撲さんが短命って、わかるような気がします。力士たちは食事のとり方が特殊なんですよね。

えっ、それってどういうこと?一日に4回、5回って食べること?あれだけ太っているのだから、1日に4回も5回もご飯食べてるんじゃないの?

その逆なのよ。お相撲さんたちは朝早く起きて、すぐに相撲の稽古をする。だから朝ごはんは食べないの。

その稽古風景を一度見学したことがあるけれど、すごかったよ。バァ~ンとかバチィ~ンと派手な音を立てて、部屋が揺れるような勢いで体重が100キロ以上もある大男同士がぶつかり合うんだから、すごい迫力だったな。


それだけ激しい稽古をした後に“ちゃんこ鍋”をたらふく食べる。野菜がたくさん入っていて、魚や肉などのタンパク質もたっぷりの健康食だ。これをおかずにして、ご飯をどんぶりで何杯も食べる。食べたらすぐ昼寝をする。それで目がさめたら夕食をとって、また寝る。


ごはんをどんぶりで何杯も食べて昼寝してまた食べるの?それだと体は大きくなりそうだけど、あまり体に良い生活ではないような気もしちゃうな。

少なくとも横綱、つまり相撲取りの中で最高位まで上りつめた人たちの寿命から考えると、健康的な生活とはいえないようね。過去70年ぐらいの間に横綱になった人たちの平均寿命は60歳ぐらいだそうよ。

今は男性の平均寿命が81歳ぐらいだし、戦後の平均寿命の推移から考えてもちょっと短いな。

 

お相撲さんのような極端な食生活をしていて、あれだけ激しく体をぶつけ合って日々を過ごしていたら、寿命が縮んでも不思議ではないでしょうね。そもそも白ごはんは炭水化物のかたまりで太りやすいうえに、食べてすぐに寝ると太っちゃうでしょう。

食べないでやせ過ぎになるのはよくないし、食べすぎてもよくないってわけね。食べるって、なんだかとっても難しい気がしてきた。

食べものの大切さ

今でこそ、食べるものがいくらでも手に入るけれど、約20万年に及ぶ人類の歴史のなかで、こんな状況になったのはわずかに数十年ぐらい前からに過ぎない。それまではずっと食べるものが不足していて、みんなお腹をすかせて生きていたんだ。

だから、今でも食べものを目にしたら、つい口に入れたくなる。これは人間にとって自然な現象といえますね。私なんか、食べ物のCMとかみるだけで、お腹すいてきちゃう!

今のようにお金さえ出せば、すぐに好きなものを好きなだけ食べられる環境のなかで、気の向くままに食べていたらとんでもないことになるわよね。

だから太り過ぎを気にしてダイエットに走る。するとたいていは無理な減量をするから、がまんできなくなって、また食べてしまう。そういうときって、たいてい食べすぎるのよね。するとリバウンドといって、前より太ってしまう。

減量すると脂肪と筋肉が減っていく。もちろんボクサーは、筋肉を落とさないようにしっかりトレーニングするけれど、普通の人が食事制限だけすると、筋肉が減り基礎代謝が落ちるんだ。そんな状態で減量をやめて食べ始めるとどうなるか。カロリーを燃やしてくれる筋肉が減っているから、そのぶん脂肪だけが増える。減量する前より太るのは、よくある悲劇だよ。

そんな太り過ぎとかダイエットの話じゃなくて、普通に健康でいられるためには、どうしたらいいの?


一番良いのは、私が毎日カホのためを考えてつくっているご飯を、好き嫌いいわずにきちんと食べること、そして適度に運動することね。私も研究者だからね、カホぐらいの年齢では何をどれだけ食べたら良いか、きちんと考えて食事をつくってるのよ。


そうだったんだ、お母さん、ありがとう。食べものは体を動かすエネルギーになるし、そもそも私の体そのものが、食べものでできているんだよね。髪の毛が伸びてくるのも、食べもののおかげ。そう考えるとなんだか不思議な感じ。

・地球人は何かを食べて生きている
・やせすぎ、太りすぎ、どちらも体に悪いらしい
・太りすぎたからやせようとしても、簡単にはうまくいかない

 

カホちゃんのギモン シリーズ