親子なのに、どうして血液型が違うの

アツモン一家の血液型の話なんだけど、お父さんのアツモンがA型で、お母さんがB型でしょう。それなのにお兄ちゃんはAB型で、お姉ちゃんがO型なんだよね。どうして、そんなにバラバラになるの?

血液型は4つある。A型、B型、AB型そしてO型だ。ここまではいいよね。そして子どもには、親から姿や形、形質などが伝わる話もしたね。そこで質問だけど、カホちゃんの親って誰だったかな?

それはハヤモンとユッキーだよ。

つまりお父さんとお母さんだね。だからカホちゃんには、お父さんとお母さんの両方からいろいろ伝わってきているわけだ。

ということは、血液型についてもお父さんとお母さんから半分ずつ伝わってきているっていうこと?

そのとおり。少しややこしいけれど、血液型を決める要素はA型、B型、O型の3種類があって、人の血液型はこのうちの2つの組み合わせで決まるんだ。

つまり、お父さんとお母さんから1つずつ要素を受け継ぐということなのかな。

カンがいいね。A、B、Oの3種類から2つを組み合わせるとどうなる?

AA、AB、AO、BB、BA、BO、OA、OB、OOでいいのかな。

よくわかったね。このうちABとBA、AOとOA、BOとOBは同じだから、結局は6種類にになるんだよ。そして、ここが大切なんだけど、AOとBOの組み合わせのときにどうなるかだ。AOの組み合わせなら血液型はA型、BOはB型になるんだ。その理由は、A、Bと比べるとOは劣性といって弱めの要素だからなんだ。

ということは、うちの家族は、お父さんがAAかAO、お母さんもAAかAO、そして私もAAかAOのどちらかになるわけだね。

そのとおり。そして、私の家族は、私がAO、家内がBO、だから息子がABで娘がOOになるわけだ。

 

設計図(遺伝子)の伝え方

AとかB、Oというのは、親から子どもに血液型を伝える設計図、正確には遺伝子なんだよね。血液型は、お父さんとお母さんから半分ずつ受け継ぐ要素によって決まる。すると、血液型以外の私の体の遺伝子もみんな、お父さんとお母さんから半分ずつ、受け継いでいるってことなのかな?

そのとおりだよ。そもそもカホちゃんは、どうやって生まれたのか考えてみようか。

それは、保健体育の授業で習ったよ。お父さんの体の中にある精子が、お母さんの体の中にある卵子と出会って、お母さんの子宮の中で受精卵になる。その受精卵から赤ちゃんができるんだよね。

そのとおりだね。精子と卵子の両方に、カホちゃんの体の遺伝子が半分ずつ入っている。それが1つに合わさってカホちゃんの遺伝子が完成する。

受精卵が2つに分裂して、また分裂してと分裂を繰り返しながら、赤ちゃんが大きくなっていく。そう教えてもらったよ。

人の体には、細胞がいくつあったか覚えているかな。

たしか37兆個ぐらいだったよね。

じゃあ、ちょっと計算してみようか。最初に分裂したら2になるよね。その2つの細胞が、それぞれまた分裂すると2×2だから4になるでしょう。

わかった。何回分裂したら37兆になるかってことだよね。4×2は8、8×2は16、16✕2は32って計算を繰り返せばいいんだろうけど……、う〜ん、ちょっと無理かな。

45回分裂すると35兆1800億個ぐらいで、46回分裂すると70兆3700億個ぐらいになるんだ。

意外に分裂する回数そのものは、少ないんだね。そして分裂するたびに私の遺伝子は、きちんと伝えられてきたわけか。

ここが生き物のスゴイところなんだけれど、人間の場合なら37兆個の細胞すべてに、同じ遺伝子が伝えられているんだよ。

その遺伝子がどんなものなのかは、ちょっと想像もできないけれど、それがあるから今の私があるってことだよね。そして、その遺伝子はお父さんとお母さんから受け継がれてきた。なんだかすごいな。

 

赤ちゃんからの成長

あれ!う~ん、なんか変だな。どう考えたらいいんだろう?

どうした、何が変なんだ?

私って、生まれたときは、当然小さかったんだよね?

そうね、体重は3キロぐらいだったかな。身長は50センチぐらいで、赤ちゃんにしては大きい方だったかも。

私が生まれたときの細胞の数は、いくつぐらいだったんだろう?もし、そのときに37兆個あったのだとすれば、それから後、私の体は一つひとつの細胞が大きくなることで、体全体も大きくなったことになるよね。生まれた時の身長と今の身長を比べれば、2倍以上になっているんだから、細胞の大きさも倍ぐらいになったのかな。

なかなか鋭い質問だね。細かい数字までがはっきりしているわけではないけれど、生まれたばかりの赤ちゃんの細胞の数は、だいたい2兆個ぐらいだといわれているんだ。

なるほどぉ。つまり体が大きくなるのは、細胞の数が増えていくからなんだね。

加えて脂肪細胞のように、サイズが大きくなる細胞もあるの。ただ大きくなるといっても、直径で1.3倍ぐらいが限度のようだけれど。

つまり赤ちゃんから成長するときは、基本的には細胞の数が増えていって、中には細胞そのものが大きくなる場合もあるということなんだね。じゃあ、体の中の例えば胃や腸なども、今の私は赤ちゃんのときに比べると大きくなっているということでいいのかな。

カホが幼稚園の頃に使っていたお茶碗と、いまご飯を食べるときに使っているお茶碗の大きさを考えてごらんよ。

そうか!今のお茶碗のほうがずいぶん大きいね。ということは、胃や腸の中に入れられるご飯の量も増えたんだ。ただ、もう1つ不思議なことがあるよ。私も最初は、1つの受精卵がスタートだったんだよね。そこから胃とか腸とか、それこそ手も足も頭も何もかも何だけど、体にはいろいろなところがあるじゃない。最初は1つだった細胞が、どうやっていろいろなものに変わっていけたのかな。

それは発生学という学問領域で研究されている内容だね。ただし、まだ詳しいところまでは、実はよくわかっていないんだ。だってお母さんのお腹の中で大きくなっていく赤ちゃんを、ずっと観察することなんてできないからね。

でもね、とても大切な研究テーマだから、世界中の研究者がいろいろな方法で調べているの。そんな中でわかったのが、例えば手のでき方なんだよ。

手って、私のこの手のこと?

そうよ。手が最初から、この形をしていると思う?

まだ、お母さんのお腹の中にいるときの話だよね。つまり、まだ私の体の形が、完全にできあがる前のことでしょう。ということは今のような手の形ではなかったんだよね、きっと。

そのとおりだよ。最初は指が分かれていなくて、ちょうど水かきのような形をしているんだ。ところが時間が経つにつれて、指の間に当たる部分の細胞が死んでいく。そしてちょうど指の部分が残るという仕組みになっている。

いつ、どこの細胞がいらなくなるのかまで遺伝子に書かれているんだね。

そのとおりだよ。

 

私は、何を受け継いで生きていくの

お父さんとお母さんからもらった遺伝子には、私が大きくなるために必要なことがたくさん書かれているんだ。ということは、これから私がどんな大人になるのかも、その遺伝子に書かれているのかな。

もし、そうだったらどう思う?

私の人生は、お父さんとお母さんが決めてくれていることになるよね。それは安心だけど、ちょっとつまんないな。

どうして、つまらないんだい?

だって、これから私が何をしても、私がどんな大人になるのかは、もう決まってるわけでしょう?それって、何だか私が私じゃないみたいな気になるよ。

そんな心配はする必要がまったくないのよ。たしかに遺伝子は、お父さんとお母さんからもらったもので、これは間違いない。でもね、その遺伝子をカホちゃんが自分の力で書き換えることもできるの。

そうこなくっちゃ!そうだよね、ちょっと偉そうかもしれないけれど、私の人生は、私が決めるんだよね。

そういうことだ。もちろん私とユッキーが、カホに遺伝子を伝えた。それがカホの体や形質などを決めているのは確かだ。でも、例えばその体や頭を使って、カホが何をどうするのかは、カホが決めるんだよ。

カホは音楽が好きでしょう。だから、ピアニストになりたければ、そうなれる可能性はあるし、運動も好きだからアスリートになってオリンピックに出ることだって、決して不可能じゃないのよ。

もちろん、何かおもしろいテーマを見つけて、その研究者になってもいいんだ。

つまり、私がこれからどんなふうになるのか、それは私次第ということね。でも、成長していくための土台は、お父さんとお母さんが私に授けてくれた。そう考えればいいんだ。ありがとうね。

 

・設計図に基づいて、最初は1つの細胞、受精卵から地球人の体はつくられていくんだ。

・最終的には1つの細胞から37兆個もの細胞で体がつくられて、それぞれの細胞が違う役割を果たしている。地球人とは、なんて複雑な構造をした生き物のなんだ。

カホちゃんのギモン シリーズ