動かなくなったセミ
どうしたの?
ほら、ここ。何がある?
セミだ。そうか、もう涼しくなってきたから、セミさんたち死んじゃったのね。
かわいそうにね。死ぬってどういうことだろうね。この近所に住んでいる人の中では、わしがいちばん早く死ぬのだろうけれど。
やだ、変なこといわないでよ。
ねえねえ、死ぬってどういうことなのかな?
また、いきなり変なこといい出すわね。
タケGがね、落ちているセミを見ながら「わしがいちばん早く死ぬんじゃ」なんていうもんだから。
セミが死んでいたんだね。そのセミは、生きているときとどこが違ったかな?
それは動かないし、ミ~ンとか鳴くこともないし……。
この間、ドクターケイが教えてくれたでしょう。体は細胞からできていて、細胞が動くから体も動く。逆に考えれば、どうなるかな?
セミの体も細胞でできてるんだよね。だから、セミの細胞が動かなくなったということか。
エネルギーがあるから動ける
細胞ってすごく小さかったよね。でも、ちゃんとエネルギーをつくり出しているから動ける。そしてエネルギーをつくるためには、酸素や食べものが必要だったでしょう。
酸素は肺から入ってきて、ヘモグロビンに乗せられて毛細血管を流れていって細胞まで運ばれる。食べものもきっと腸の中でめちゃ細かくされて、たぶん毛細血管を通じて細胞まで運ばれるんだろうね。
そのとおりだ。じゃ、細胞まで運ばれた酸素と食べ物は、一体どうなるんだろうか?
細胞が動くためにはエネルギーが必要だから、酸素と食べ物からエネルギーがつくられる。そういうことじゃないの?
よくわかったね。
でもさ、まだわからないことがあるよ。酸素と食べものから、どうやってエネルギーはつくられるの?
それも、細胞ってとっても小さなものだったよね。細胞の中って、どうなってるの?
そこから先は、またドクターケイに教えてもらおうか。
細胞の中の発電所
<ドクターケイ登場>
ドクターケイさん、教えてほしいことがあるの。私の体が動くのは、ひとつひとつの細胞が動くからで、細胞を動かすためにはエネルギーが必要。そのエネルギーをつくり出すためには酸素と食べものが必要。ここまではわかったの。じゃあ、細胞の中ではどうやってエネルギーがつくられているの?
そんな話にまで進んでいるのか、ハヤモン一家はみんな「科学」がとても好きなんだな。ところでカホちゃんは理科室で顕微鏡を見たことがあるよね?
もちろん、それでタマネギの細胞を観察したんだから。
顕微鏡は小さなものを見る装置でしょ、だから性能のよい顕微鏡を使えば、人間の細胞の中まで見ることができるんだ。
うわぁ~、それって見たいような、見るのがちょっと怖いような、でもやっぱり見たいな。
人の細胞はものすごく小さいのだけれど、その中にはさらにいろいろなものが入っていることがわかっていて、その一つに「ミトコンドリア」と呼ばれるものがあるんだ。
ミトコンドリア。
そう。これは細胞の中で発電所のような役割を果たしているんだよ。
発電所って、電気をつくるところね。電気って、そうか!エネルギーをつくってるわけね。
そのとおり。ミトコンドリアは細胞の中に取り入れた酸素と食べもの、もう少し詳しく説明すると食べものを細かく分解したものを使ってエネルギーをつくっているんだ。そのエネルギーが体を動かす力になるんだよ。
ちょっと待ってね、確か肺で吸い込む息の中には酸素が含まれていて、吐き出す息の中には二酸化炭素が含まれるんだよね。体の中、つまり細胞の中のミトコンドリアで酸素が使われて、そのときに二酸化炭素ができるということなのかな。その二酸化炭素が肺に運ばれてきて、体の外に出ていく。そういう仕組みになっているの?
ハヤモン、カホちゃんに一体どんな教育をしてるんだい?考える力がすごいじゃないか。
生命はエネルギー
あまり教えているつもりはないんですが、カホがいろいろ質問してくるので、そこからさらに疑問を引き出すようには意識していますね。
なるほど、そうやって考える力を引き出しているのか。
じゃあ私も1つ、カホちゃんに質問してみよう。生きるというのは動くということだったよね。そして動くためにはエネルギーが必要で、エネルギーを生み出すためには、酸素と食べものが必要だった。この仕組みは、生き物すべてに同じなんだろうか?
動く物と書いて動物というのだから、人間も含めて動物には当てはまるんじゃないかな。
そうだね。では植物はどうなんだろうか。植物も生きているでしょう?
たまに枯れてしまった植物もみかけるけれど……。
そうか、枯れるというのは、植物にとっては死ぬことなんだ。それってつまりエネルギーを生み出せなくなったってこと?
正解。動物も植物も、生きているというのはエネルギーを生み出している状態なんだよ。
じゃあ、もう1つ教えてほしいんだけど。
何かな?
ケイさん、この間道ばたで動けなくなってたとき「乳酸がたまっちまって動けねえ」とか、わけわかんないこと言ってたじゃない。あれはどういうことなの?
知りたいかい?
とっても!
じゃあ、今度一緒に走ってみよう。乳酸がたまるというのが、どんな感じなのか、カホちゃんも体験できると思うよ。
・ものすごく細い血管の中を酸素や食べたものが細胞まで運ばれていく
・酸素や食べたものを使って細胞の中のミトコンドリアでエネルギーがつくられる
・エネルギーがつくられるとき、酸素が二酸化炭素に変わる
カホちゃん、ちょっとこっちに来てごらん。